ヲタ論争論ブログ

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安保法制をめぐって暴走する人々

 暴走しているとしか思えない。公安だの就職だのを持ち出して脅すなんて、「最後の手段」だろうに。まだ国会の会期も序盤でコレなんだから、何が起きているのかと思う。法案を推進したいのならその理由を述べてまず争うなりすべきであって、これじゃいきなり「逆ギレ」だ。恐ろしいとか何とか以前に、私はあまりの滑稽さに吹いてしまった。正直、「ボクにはスーパーハカーの知り合いがいるんだぞ!」レベルの発言なんだが、彼ら、またはこの手の発言に賛同する人々は気がついているのだろうか?

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 彼らは、SEALDsなどの反対運動が大衆的なものだと信じられず、妄想激しくレッテル張りを繰り広げている。しかし、彼らにこそ向けて説明する、それは大衆的なものだ。

 何故なら、ネットにおける先鋭化や過激化はもともと「右」や「保守」側から始まったものだし、実際には彼ら自身をこそ指す性質だからだ。「過激派」とは彼らのことである。

 「ネット右翼」(ネトウヨ)の多くは、熱烈に自民党を支持する傾向が強い。組織員顔負けの宣伝的な書き込みや対立勢力への罵倒を厭わない。けれども、彼らの殆どは自民党員ではない。自民党ネットサポーターズクラブなどもあるが、それもその一部しか組織化できていないはずだ。統一教会原理研)の暗躍などが言われることもあるけれど、これもたかが知れていると思う。

 自民党は、かって547万人もの党員数(1991年)を誇ったが、現在は89万人にまで激減している。それも一時期はあと10年で9割が他界すると言われたほど高齢化が進んでおり、組織の弱体化は深刻だ。2年前の自民党の政権復帰以来、16年ぶりに増加に転じているけれど、それでもかつての姿は見るべくもないのが実情だ。

 こうして、自民党組織が衰退してぽっかり空いた空間に位置するのが「ネット右翼」ないし「ネット保守」だと見なすのが妥当だ。本来なら自民党に組織化されていたはずの層が浮遊し、勝手に政治化し尖鋭化しているのが彼らだと思われる。

 そして、あえて言うけれど、組織化されていないからこそ、彼らは「下劣」で「愚か」だと言われる存在なのだろう。

 これまで数々の事例がある通り、あまりにも彼らはデマや謀略紛いなものに流されやすい。或いは頼りやすい。そして剥き出しのレイシズムや上述したような脅迫紛いに落ちやすい。嘲笑や口汚い罵倒、そして聞く者が耳を塞ぎたくなるようなそれは、まともな政治的訓練をしていない証拠でしかない。

 彼らは、「政治」というものを何か「そういうもの」だと勘違いしている。または、わざわざそう思い込んでいる。組織員であれば結果的な不利を考えてあからさまになど絶対にやらない謀略ビラまきや個人的中傷などを堂々とやってのける。

 だが、世間にどのようにイメージされているかは別として、存外、政治家や運動員、組織員当人たちというのは清冽な人々だ。というより、そうでなければ国民一般はおろか内輪からですら支持を集めることは出来ないし、政治勢力としてあり続けることができない。彼らは政治的訓練を積んだ人々であって、時折飛び出す例外を除いて、少なくとも表向きにはやってはならないことをよく見極めており、人々に面してどのように振舞えばよいかを良くわきまえている。優秀な「営業マン」や「人格者」や「人気者」でなければ務まらない。

 意外に思われるだろうが、例えば安倍首相と共産党の志位委員長とは、同じ年齢、同期当選ということで平たい場では親しく対する関係だと報じられている。勿論、腹中に何を秘めているかは知らないが、たとえ公的には激しく論戦し主張で衝突しようとも、それを置けば親しく互いを認めることができる。それが民主的「政治」の原則であり基本的な振る舞いのマナーだ。

 こうした組織の統制やまともな指導や教えを受けず、或いはその姿をよく知らず、そして彼ら「ネット右翼」や「ネット保守」はネット越しにいきなり人々に訴えかけることしか知らない。恐らく、政治的運動に携わるには、ある種の訓練と能力と振舞いが求められるということにさえ気づいていない。


 自民党組織の最盛期に、私はひょんなことからまだ当選2、3期目頃の「坊ちゃん」だった谷垣禎一現幹事長の選挙講演会を見にいったことがある。その頃から自民党の高齢化は覆うべくもない状態だったが、会場では品の良い老婦人たちが穏やかに居並び、青年商工会議所あたりから来たと思しき仕立ての良いスーツを着た男たちがあれこれと動き回っていた。地域の有力者たちが「谷垣の坊ちゃん」を支えるのだという空気であり、なるほど自民党とはこういうものかと思った覚えがある。

 その谷垣さんがやがて自身の派閥を率い、総裁までを争うようになった麻生政権時代、秋葉原で「オレたちの麻生」こと麻生首相を迎える形で行われた選挙演説のニュースを見て、私はあまりに観客の「品が悪くなっている」ことに驚愕することになった。場所や時代の違いもあるだろうが、サングラスをした化粧の濃い女性や、ポン引きかと見まがうようなだらしない出で立ちの男たち、そして高齢のオタクとおぼしき人たちが目立ち、明らかに動員のかかる層が変わっていて我が目を疑った。彼らは熱狂的に麻生首相の名を呼ぶが、それは金切り声に近く、かえって沈みゆく船に乗る悲鳴を思わせた。その予感はやがて政権交代という現実となる。


 政権に復帰後、自民党は危機意識をもってペナルティまで課し、組織員の拡大に取り組んだ。2年で約20万人を増やすという、16年ぶりの大規模な拡大攻勢に出ている。浮遊する「ネット右翼」や「ネット保守」たちを組織へと急速に吸収しつつある状況に見える。

 だが、約90万の党員のうち20万人がここ2年で入った新人だという、かなり「水ぶくれ」甚だしい状態だ。それがいわば逆汚染となって自民党の「劣化」を招いていると見ることもできる。安倍首相の「ネトウヨ化」を懸念している人も数多い。

 これから、彼ら「ネット右翼」や「ネット保守」達は、政治的経験を積み、「まともな」政治勢力となっていくのだろうか?それとも、「逆汚染」を広げてついに自民党を食い潰してしまうのだろうか?少なくとも就職やら公安やらで脅迫しているようでは望みは薄い。「内側」からこれを指摘する者が出ないのなら、なお一層悲観的だと言える。誰か「まともに」領導する者はいないのか?